父とこねれば

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oeuvre
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前から気になっていた白神こだま酵母。

たまたま地元の図書館に行ったら、「わたしを借りるのだ」 と言わんばかりに本が目に付くように棚の一角から飛び出ていた。

近所のスーパーで白神山地の水が2ℓ100円で売っていた。

買って帰ってきたら、注文していた酵母が届いていた。

そんなわけで、父を誘い、パン作り。

やはり、餅は餅屋、料理人はパン屋ではないものの、 手つきは匠だ。

ベンチタイムに、料理がテーマの映画について父と話していた。

「歴史は夜作られる」は、まだ見ていない。

パンは4時間はかかるものと思っていたのに、 粉、水、ほんの少しの砂糖と塩、そして豊かでやさしい酵母のおかげで、 3時間ほどでパンが焼きあがる。

初めてだったから段取りに少し手間取ったけれど、慣れれば、なるほど2時間で完成できるシンプルさ。

必要最小限のものを使ったパンは、手ごたえと弾力があって、 かむほどにおいしい。 いろいろなものを混ぜに混ぜて、原型はいったいなんなのかわからない 叶姉妹のようなパンが巷にはあふれているから、 知らず知らずそれに慣れてしまっている舌は、 このパンを食べたとき、確かに戸惑う。

両手放しで「んぅーまーいー!」と叫ぶようなものではない。 弾力があるけれど噛みごたえもあるから、 みんな無言であごの運動を続ける。 それから、ため息をつくように、 うまい、と言ってしまう。

秋田の冷気を知っている酵母は、冷凍にも強いから、一次発酵を終えた段階の 生地を冷凍しておくことができる。

焼きあがったパンはやさしく温かい。