Bonne année 2014 ! 昨年は、サーバートラブルを期に教室のウェブサイトと共にデザインの一新をしたりしておりまして、結局半年以上更新できませんでした・・・。深く反省しまして、もう二度と「2日に1回更新する」などという香ばしいことは口にしないようにしよう。
今年は、地道にフランス語の話題をぼちぼち話せればいいなぁと思っています。いままであまり書いてこなかった、どんな教材や参考書を使っているのかとか、一学習者としてどんな自主学習をしているのか、いままでどんな学習をしてきたのか、なんていうことについても触れていくつもりです。
なぜ、これまで自分の学習方法にあまり触れてこなかったのかといえば、ずばり自信がなかったの一言に尽きるわけなんですが、齢30年以上生きてきますと、あらゆる分野で如何に自分がはみでまくっているかがしみじみとわかってくるので、人様に伝えたところで、「お、おう・・・」という内容にしかならないような気がしておりました。というより、確実にそうなる予感でいっぱいなのですが、ま、いいや。
このブログは、こう見えて、結構前から続いているものなので(JUGEMにページを残していますが、しばらくしたら削除されここに完全移行します)、以前からお読みになっている方はよくわかっていらっしゃるかと思われますが、フランスというキーワードでやってきても、ここには、いわゆる「キラキラ女子」系の話題は一切ありません。昔は、そういうあこがれを抱いていらっしゃる方々に後ろからチョップしたり後ろから飛び蹴りしたりするような気持ちをダイレクトに綴ったりすることもありましたが、現在では生暖かく見守っております。
さて、本日は執筆リハビリも兼ねて、フランス語に関係あるようなないような話をしてお茶を濁そうと思います。
岡本かの子が描く「モテる男はこう!」
今年のセンター試験の国語、岡本かの子の「快走」でしたね。「あはははは」「うふふふふ」という若干ラリ気味のラストに、またもやセンター国語がやってくれたと、やや話題になったところです。
Kindleだとタダでダウンロードできます。
岡本かの子といえば、代表作ではないものの、われわれ(?)の場合は「巴里祭」という作品が思い浮かびます。ざっくり言えば、新吉という青年がパリでパリジェンヌにモテまくる話です。
「巴里祭」もKindle版はタダ。
あまりにざっくりし過ぎましたので、もう少しなんとかしましょう。
新吉はパリに建築を学びに来て、ついそのままだらだらと15年も居着いてしまって、自分のことを「追放人(エキスパトリエ,expatrié)」と呼ぶ程。実は、15年前に建築学校の教授の娘カテリイヌに恋をしてしまい、その幻を追いかけて過ごしてきたのだけれど、今年のパリ祭(7/14)にはカテリイヌに出会えるかもしれないと根拠の無い期待でずるずる帰国を延ばしている。
これだけ書くと、純情男に見えますが、実は国元に童顔の妻がおり、さらにパリで遊び人のリサと仲良くなり、下宿先の美人でやや情緒不安定な寡婦夫人にはヤキモチを焼かれ、それはもう3歩進めば両手に一抱えの人外魔境のモテぶり(@なすゆきへ先生)。
そんで、童顔の妻から「最近前髪に白髪が混じっているのを発見した」なる手紙が届いて、急にあはれに思い出してなんだか落ち着かなくなり、でもカテリイヌが自分の膝の上に乗っかった時の肉厚臀部の追憶にふわふわし、そんな彼をなじる下宿の奥さんもちょっと愛おしく、更には遊び人リサに「あんたにぴったりの若い女の子を紹介してあげる」と言われて、まんざらでもなく・・・
この道は〜いつか来たみ〜ち〜・・・どこで見たのかというと、
エリック・ロメール監督「夏物語」でありました。
夏休みに、恋人と待ち合わせてディナール (サン・マロ)で一緒にヴァカンスを過ごそうとしているガスパール君。しかし、恋人は一向に現れず、騙されてんじゃね?と疑いが芽吹き始めた頃、カフェで仲良くなったマルゴ(元気なアネゴ系、こちらも遠距離恋愛の彼がいる)と微妙な雰囲気になり、さらにはビーチで出会った美人な女の子とも仲良くし(マルゴは不機嫌になり)、そこに待ち人来る、本命の恋人(周りを振り回す女王様系)が登場し、俺はいったい誰を選んだらよいのかいな〜とアンニュイにギターをかき鳴らすガスパール君。
きみらドッペルゲンガーか。
岡本かの子の描く新吉は、あっちへふらふら、こっちへふらふらと揺れ動く気持ちを柔らかな眼差しに潜め多くを語らず、物思いに耽る影のある横顔、思わず女性が構いたくなってしまうような体温の低そうな男性なのですが、これがそのまま映像になったのがエリック・ロメールのガスパールになります。ただ、ガスパールの方が年若いので、新吉のようないぶし銀的狡猾さを伴う心情がまだない分、いくらか間抜けに見えます。
それにしても、この手の煮え切らないボウフラ系男子はなんでモテるんすかね。ぼ〜っと好きな女の子のことを考えているだけなのに、あちこちから引く手あまた。実際、新吉の外見についてはほとんど描写がないのですが(新吉の目を通した女達の外見については詳しく書かれている)、端正な顔立ちを想像してしまいます。更に、ここぞ、という時に「他の男のところに行っちゃいけない」なんて普段に似合わない強い口調で言ったりするところなぞ、天性のツボ押しと言えましょう。わかりづらい女心のツボを心得ているのです。
この話、実は新吉が一番振り回されているのは、女達ではなく、巴里の街であった・・・にくいねェ、というオチがあるわけですが、Parisという都市の名前は一応男性名詞なのですが、機嫌のいい時にはスリスリしてくるのに、こちらがモフモフしようとするといきなり猫パンチをくらわすような、気まぐれな女性的な街として描かれているのが面白い。
冬樹社の復刻版全集だと旧仮名使いなので漢字の読み方が分からず、青空文庫(新仮名遣いに直してくれている)と合わせて読みました。他の作品も、ストーリー展開が独特で、どちらかと言うと「男らしい」さらっとした描写で男女の機微を描いている作品が多く、読みやすいです。ちなみに、装画はもちろん息子の太郎さんです。
太郎さんといえば、昔ちょっと入院した時、夫君(当時はまだ彼氏だった)がお見舞いに持ってきてくれたのが、
岡本太郎「自分の中に毒を持て」 手塚治虫「ガラスの地球を救え」 五木寛之と野坂昭如の対談集「対論」
の三冊だったのですが、今思えば、病人に向かってニコニコとこの三冊を渡す彼も彼なら、病院のベッドで五木と野坂の無駄にギラギラした「オナニー青春論」を読むわたしもどうかしています。
今日はこのへんで。