エリック・ロメールといえば、 愛とモラルに関する薀蓄を語るモラルゼロのヒーローと、彼を取り巻く女たちの矛盾した言動を、赤と白と青で彩る映像。 素人っぽさを徹底的に好むシネアストだから、主人公もなんだかふわふわひょろりとした人が多くてあんまり私は彼の映画のヒーローたちって好きではないのだけれど、さすがはジャン=クロード・ブリアリ、こんなにどっしりリアリスティックにふわふわスケベオヤジを演じられる人は少ない。
ARTEで彼へのオマージュとしてやっていたので初めて見た「クレールの膝」は面白かった。「Mais QUI êtes-vous (アンタ誰)?!」というもじゃ公な外見にはべっくらしましたが、Pauline à la plage(海辺のポーリーヌ)のHenryが「あの」外見なのにモテモテな設定に愕然としたことに比べればたいした衝撃ではありません。 ※JOUP(おなじみJ'ouvre une parenthèse) フランス人的感覚では、いわゆる「ピッカリ君」はセクシーな男性=魅力的という扱いになります。男性ホルモンがもわもわ出ているからなのだそうで。 早稲田の小さな映画館で「ポーリーヌ」を見た時にはまだヒヨッコだったヒヨまりにとって、そのカルチャーショックは大きかった・・・ 今は全然OKです。ピッカリな人でもかっこいい人はかっこいい。ピッカリな自分を潔く認めている人は素敵です。 今改めて「ポーリーヌ」を見ると、確かにHenryは薄いブルーの瞳の端整な顔をしているし、締まったボディも魅力的に思えます。 あ、そっか。だからフランス人でバーコードな人って見かけないんだな。今更納得。みんな堂々とつるつるしているんだもん。 しまった・・・「ジャン=クロード・ブリアリ考」のはずが、うっかり「ピッカリを考える」に・・・ JFLP(Je ferme la parenthèse) JC(ジャン=クロード)はふさふさしていました(まだ言うか)。 この映画を見て、いわゆる「男性の助平思考」がなんとなくわかったような気がしました。「据え膳食わぬは」というプライドと、若い女の子に対する畏怖と、己の欲望の渦巻きが、ただ「膝をなでる」ということにひたすら向かってぐるぐる。 毎度下世話な話なのに、ぎりぎりのところで品よく収めるところがエリック・ロメールの技なんでしょうが、女子高生の膝をなでなでしているのに品格があるように見えるJCの演技もすごい・・・。 「女は女である」の中で、JCの恋人役のアンナ・カリーナが、彼女に横恋慕しているベルモンドに「なんであいつがいいの?」と聞かれて、 「かっこよくてバカだから。」 と答えるシーンがあるのだけれど、確かに「バカでかっこいい」っていうのが、若いジャン=クロード・ブリアリにはとても似合っていた。 バカがかっこよさを半減させることはよくあるけれど、かっこよくて、バカなことをしてもやっぱりかっこいいっていうのは難しいよね。