これぞ、フランスの笑い。 それが、Kaamelott(カームロット)。 2005年からカメラ・カフェの後番組としてM6で始まったショートコメディ。 5世紀のイングランドがまだブルターニュと名乗っていたころ。 アーサー王と、かの円卓の騎士を取り巻く物語・・・ と、言っても。 アホに磨きがかかった騎士たち、役立たずなだけでなく足をひっぱりまくる有象無象たちに囲まれた王アルチュール(Arthurをフラ語読みするとこうなります)は、円卓ではわけのわからない珍言・発言に頭を抱え、寝床ではユルくてお世辞にも美しいとは言えない王妃ギュニエーヴルとの確執に目を白黒させ、実母と姑その他の強烈なマダム軍団にうるさく「早く跡継ぎを作れ」と迫られ、「Merde! Merde! Merde!」(Désolée...)と叫ぶ毎日。さらには唯一「まともに立っている」と心を許していたランスロットが王妃と駆け落ち(王妃の場合でも駆け落ちというのか???)して、王の威厳はガタ落ち・・・ 使われるフランス語はぎりぎりFamilier、ほぼvulgaire。 アルチュールを始め、本来ならばとてもクルトワ(Courtois、中世の由緒正しき王族・騎士などが守るべき礼儀を知っているもの)であるべき騎士や王族たちは「Foutre」(Faire、「やる、する」の一番下品な言い方。本来は性的な意味をもつらしい)を公的に使って会話をする。 「Mais qu'est-ce que vous me foutez ?!」 (てか、なにしやがるこのやろう?!) エトセトラ。 実際、常用3大単語は「con」「merde」「foutre」(きゃーこの間からどうもCorにはおげれつな単語ばかりが・・・!訳は個人でお探し願います) なにがフランスらしいかというと、Chrétien de Troyes(クレティエン・ド・トロワ)を始めとする名だたる中世の文学作品を総なめにベースにし、ものすごい詳細に調べ上げ、物語から登場人物ひとりひとりから、すべて見事にパロディに仕上げているところ。バカに力いっぱい自らを捧げるのです。 以前から何度かここにも書いたランスロットの話(荷馬車騎士)といい、突っ込みどころ満載な中世文学を思う存分にうまく使っていて、それぞれの原作を知っていると、どこがどんな風にパロディされているのかがわかってかなり面白い。 監督はAlexander Astierアレクサンダー・アスティエ(写真↑)。 彼はチャップリン並に何でもこなす。 企画・脚本・監督・音楽すべて彼。 そんでもって、彼がアルチュール王なのだ。 (ちなみに、アルチュール王の舅役(つまり王妃ギュニエーヴルの父)はアレクサンダーの実の父リオネル・アスティエ、Chevalier de la Table rondeの騎士の一人、イヴァン役は腹違いの兄弟シモン・アスティエ。どうりで顔が似てると思った・・・実際イヴァンはアーサー王の義理の弟でもあります。) ランスロット役のThomas Cousseauトマス・クッソーはブルーの瞳が印象的なカームロット唯一のイケメンな登場人物(Livre Vではもじゃひげであまり顔がわからない・・・)なのですが、 まりお勧めはやっぱりアルチュール。 中世文学ではアーサー王は「だめんず」の代表と言われがちですが、 カームロット版アルチュールは、周りが頭のおかしい連中で固められているのですべてのボケを一身に背負い、つっこみ大王として君臨。いざとなれば行動力も勇気もあり、伝説の剣・エクスカリバーを遣えば無敵。 どこか冷めていながら、子供と大人が混じったようなきかん坊のSire(シール、「サー」のフラ語)はかっこよくはないんですが、可愛いい! さっきアレクサンダー・アスティエが一歳しか年上でないことがわかって、結構衝撃だったのですが・・・Livre V(すでに第5期に入っています)の特別長編で久しぶりに見たら髪が伸びてちょっと男前!でした。 背景がわからないとなかなかその面白みを受け入れて貰えにくいのですが、日本でもやってくれないかなー。ていうか、生Sireを見たい(笑)! ↓4月30日にM6で放送されたLivre Vをちょっとだけ見られます。 (ただし字幕なしです・・・食卓の場面、カルメリッド王夫婦(アルチュールの義理両親、アキテーヌ公夫妻、アルチュール)